難聴や老眼など高齢者にはさまざまな身体の変化が見受けられますが、筋肉の量が減ってしまうことも変化の1つに含まれます。そして筋肉の量が減ることに伴い、身体の代謝も低下します。成人になったばかりの頃と比べて体温が低くなる高齢者が多いのは、この代謝の低下が影響を及ぼしているからなのです。
身体の代謝が低下すると、体温を調整する機能も衰え始めます。その結果、気温の影響をより受けやすくなります。一人暮らしの高齢者が真夏にエアコンをつけていない部屋で熱中症になったニュースがよく報道されていますが、これは自身で体温の調整があまりできなくなってしまった高齢者に見受けられる症状なのです。また、インフルエンザにかかっているのに、発熱をしないという現象も高齢者にとっては珍しいことではありません。普段の体温が低いため、インフルエンザにかかっても37度を超えないことがあるのです。普段から体温が低い高齢者は、インフルエンザの自覚がないまま感染を広めてしまうケースがあるので注意しましょう。
無自覚のインフルエンザによる感染拡大を防ぐためには、高齢者が自分にとっての平熱を把握しておくことが重要になります。自分の平熱を把握するには、同じ時間帯の同じ室温という条件で体温を3日間計測することが推奨されています。健康な状態で3日間の体温がほぼ一致していれば、その数値がその人にとっての平熱なのです。そして、頻繁にせきが出たりのどの痛みを感じたときに体温を計測して平熱よりも1度以上高ければ、37度を超えていなくてもインフルエンザを疑いましょう。体温の正常値を把握することは、高齢者が身体の変化に順応する第一歩だと言えます。