高齢になると耳が聴こえにくくなるという老人性難聴は、誰でも罹患しやすい疾病です。老人性難聴は、一般的な難聴と同様で、単に耳が遠くなって、外部の音から遮断されるだけではありません。一応聴こえる音声も、何を言っているのか理解できないという状態に陥ることが多いのです。特に、「ザ」と「ガ」や「ゾ」と「ド」など、濁音系の音が聞き取りにくくなります。この状態は、他人とのコミュニケーションが難しくなることに加えて、高齢者の孤独感を強めます。

対面して相手の顔が見えているのに、何を言っているのかわからないと、自分だけ取り残されたような気分になるのです。目の前で若い人たちが楽しそうにお喋りしている姿を目にするだけでも、老人性難聴を抱えた高齢者にはストレスになることがあります。こうした孤独感を生じさせないよう、介護者には細やかな気遣いが必要でしょう。また、老人性難聴は認知症を併発するおそれもあるので、注意しなければなりません。難聴により耳からの刺激が減ると、脳の働きも衰えるからだと言われています。

老人性難聴を治療により治すことは困難で、補聴器を用いることが求められます。ただし、補聴器を付けると日常会話はある程度可能になるものの、不必要な雑音まで拾ってしまうため、補聴器の装着を嫌う高齢者も少なくありません。また、小さな補聴器は落としやすくて、高価な補聴器を紛失すると経済的ダメージが大きいことから、装着したがらない高齢者もいます。したがって、介護者による補聴器の管理とサポートが、高齢者を孤独感や認知症から遠ざけるための方法の1つと言えるでしょう。